COLUMN

労働時間制度を変更せずに
始められるテレワーク導入術

武田 かおり 氏
社会保険労務士法人NSR
テレワークスタイル推進室
CWO

武田 かおり 氏

テレワークの導入により働きやすい職場環境を実現した結果、雇用継続や従業員満足度が向上するだけでなく、優秀な人材確保に成功する企業が増加しています。人材確保の難しい中小企業にとって、テレワークは知名度やイメージアップの重要な要素となっていることは間違いありません。ところが、テレワークを導入する際、就業規則の変更や規定の作成が面倒だと敬遠されることがあります。しかし、「tele=離れた」と「work=働く」を合わせた造語である「Telework=テレワーク」は、いつものオフィスと違う「場所」、離れた「場所」で働くというのが基本であり、「場所」が変わるだけで、同じ「時間」で、同じ仕事を行うのであれば、必ずしも就業規則や規定を変更する必要はありません。逆に、「時間」を柔軟にすればするほど、就業規則の変更や規定の作成が煩雑になってきます。就業規則の変更や作成がテレワーク導入の足かせとなりやすい中小企業では、「場所が変わるだけ」のテレワークから始めることで、テレワーク導入の敷居がかなり低くなります。

労働時間制度についても、「フレックスタイム制」や「みなし労働時間制」などの柔軟な労働時間制でないとテレワークができないと誤解されがちですが、「場所が変わるだけ」のテレワークであれば労働時間制度を変えずにテレワークを実施することが可能です。

しかしながら、在宅勤務などで通勤時間が削減された分、「早めに仕事を始めて早く終わりたい」という要望や、「一時的に業務を中断し、プライベートなことに時間を利用したい」など、通常の労働時間制であっても、いわゆる「中抜け時間」を利用して、テレワークのメリットを活かすことも考えられます。この「中抜け時間」については、「使用者が業務の指示をしないこととし、労働者が労働から離れ、自由に利用することが保証されている場合」は「休憩時間」や「時間単位の年次有給休暇」として取り扱うことが可能とされています。

中抜け時間に関しては、「休憩時間」にする場合は、賃金カットするのか、始業時刻または終業時刻の変更で対応するのかなどのルールを決めること、時間単位の年次有給休暇とする場合には、労使協定の締結が必要なことなどに留意すれば、通常の労働時間制であっても、働く時間を柔軟に活用することができます。また、現在の就業規則に私用外出に関する規定や始業終業の繰上げ繰下げについての規定がある場合、その範囲内においてトライアルを実施できます。トライアル終了後、利便性を検討し、拡大するのであれば、就業規則を変更した上で、本格導入に移行すると良いでしょう。