COLUMN

働き方改革できない
企業が直面する
「採用リスク」

2017年の有効求人倍率は44年ぶりの高水準を記録した。
優秀な人材を採用、定着させるには働き方改革が不可欠になっている。

横浜国立大学 服部 泰宏 准教授

横浜国立大学
服部 泰宏 准教授

実は2タイプある若者たちの「安定志向」

2018年1月末に厚生労働省が発表した2017年の有効求人倍率は、平均で1.50倍。1973年以来、44年ぶりの高水準を記録した。労働力の争奪戦は激しくなるばかりであり、優秀な人材を獲得できるかどうかは企業の成長・存続に大きく関わってくる。

売り手市場と言われる中、就活生たちは、就職についてどのような意識を持っているのだろうか。採用学専門家の横浜国立大学の服部泰宏准教授は、「最近の学生は“安定志向”といいますが、ここには全く違う2種類の志向が隠れています。1つは、業務的にも組織体制的にも揺らぎの少ない組織に所属することで、キャリアの安定を図るタイプ。これが、一般的にメディアで言われているタイプ。でも、実は今増えているのは、もう1つの“新型安定志向”なのです」と言う。

「新型安定志向の学生は、企業に対して組織そのものの安定性よりも安定的なキャリアを可能にしてくれるスキル・知識・経験を身に付ける場であることを求めているのです」(服部准教授)

マイナビが2019年春に卒業予定の学生に行った調査でも、男女ともに1位は「愛する人と結婚して子どもができ幸せに暮らす」というプライベートの充実だが、次に続くのは「一生食べていける安定した仕事を持つ」ことと「自分の好きな仕事を一生続ける」ことだ。

同じ組織にずっと所属したいという意味の「安定」志向とは違い、組織や企業の永続性に疑問を持ち、その中で自分が働き続け、成長できる現場を探しているのだ。具体的には若いうちから事業の中核を経験、キャリア初期に成長機会があり、転職などで組織が変わっても長く働ける安定した力を身に付けられるかどうかを見極めようとしていると言う。

理想とする「将来の自分」像

多様な働き方を提供できる企業が評価される

「今の学生たちは、成長機会だけに注目しているわけではありません。働きがい、働き方も重視しています。良い車に乗るとか、良いマンションを買うことに大きな意味を見出しておらず、“仕事がワクワクするか”“社会的に意義がある仕事か”を判断材料の1つにしています。その結果、様々な事情や価値観に応じた多様な働き方を提供している企業がポジティブに評価されるようになっているのです」(服部准教授)

こうした働き方への考えを持っているのは若者だけではない。子育て世代や、家族の介護など、様々な事情を抱えた社員に安心して働き続けられる環境を提供できなければ、企業は優秀な人材を手放していくことになる。

逆に、多様な事情を抱えた人たちでもやりがいを感じ、柔軟に働ける環境を提供できる企業ならば、優秀な人材を確保し、大きな成長を遂げることは可能だ。

商工中金の調査でも、中小企業の人材不足感は強い一方で、その解消のために働き方改革への取組も積極的に行われていることが分かる。シニアや一度子育てなどで退職した人、外国人など多様な人材を活用できることが、その企業の強みにつながっていく。

働き方改革に積極的に取り組むことは、優秀な人材の確保、そして企業の生き残りには不可欠なのだ。

中小企業の働き方改革実施状況