COLUMN

人生100年時代に向けた
働き方、学び方、生き方とは

高橋 俊介 氏
慶應義塾大学
大学院政策・
メディア研究科
特任教授

高橋 俊介 氏

現代におけるキャリア形成の大きな特徴は、想定外変化が頻繁に起こることと、一方で職業キャリアの期間が人生100年時代ますます長くなっていることであろう。想定外変化はテクノロジーの進展だけからくるのではなく、ビジネスモデルの変化や事業構成の再編成など、企業の経営環境の変化にも大きく影響を受ける。そこでは将来の具体的な目標を立てて、そこから逆算して効率良く無駄なくキャリアを作るという発想は成り立たなくなる。無駄のないキャリアほど変化にぜい弱だ。一つのことを細く深く長期に積み上げるキャリアもリスクが高い。

大事なのは、継続的に学び、キャリアを切り開き続ける習慣である。その中でも主体的な仕事の習慣、深く学ぶ習慣、人間関係に投資をする習慣は特に重要だ。決められた仕事、指示された仕事をそのままやるのではなく、自分なりの仮説や自論を持って仕事に取り組む。今後の自分の将来に大事になる、自分として興味を持てるテーマにできるだけ絡むように仕事を膨らませるという習慣も、結果的に次のキャリアへの投資になり、キャリアに幅を持たせるとともに、次のテーマへのキャリアの懸け橋になる。

目の前の仕事の効率性ばかりを考えると、キャリアがやせてしまい、想定外変化に耐えられず、キャリアは先細りになりやすい。特に仕事をしながら深く学ぶということは大事である。どんな仕事にも本来の目的があり、仕事のやり方には歴史的背景や科学的根拠が大事である。そこまで理解して仕事を進めることは、表面的なテクニックではなく普遍性の高い学びにつながる。表面的テクニックはその場の効率は良いが、変化に耐えられず、またゼロからの学びが必要となる。このような積み木崩しの状況が繰り返されれば、キャリア形成や人生全般にもはや前向きになれない。

深く学べば想定外のキャリアチェンジでも引き出しの数が積みあがっている。その中で基礎から新しい分野の勉強をやり直す必要性を強く感じたら、高等教育機関の門をたたくのも良いだろう。キャリアの思わぬチャンスは、親しくない人からやってくると言われている。そのためには自分の仕事や自分の仕事ぶり、仕事上の興味や勉強への取組を周囲に伝えておく。周囲の人たちにもできる範囲で仕事やキャリア形成上の手助けをする。これが人間関係への布石であり投資である。

良い習慣が結果として満足度の高いキャリアに結び付くという考え方が、こういう時代だからこそ大事なのではないだろうか。