COLUMN

企業における「ダイバーシティ経営」の実現

小田 文子 氏

経済産業省
経済産業政策局
経済社会政策室長

小田 文子 氏

昨今、日本社会を取り巻く環境は劇的な変化を迎えており、企業が厳しい競争を勝ち抜いていくためには、従来の均質的な人材で構築されていた組織を変革し、多様性を確保していくことが必要となる。加えて、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少により、今後、企業は恒常的な人手不足に陥っていくことが予想される。そうした状況の中、経済産業省では日本企業におけるダイバーシティ経営をCSRの観点ではなく、持続的に経営上の成果を生み出せるような企業の競争戦略として実施すべきと位置付けている。

本来、ダイバーシティ経営とは多様な人材を活かす戦略であるが、政府全体としては、まずは女性の活躍に特に軸足を置いている。15歳から64歳の女性の就業率は直近で70%超に達し、女性の年齢階級別労働力率に見られる、いわゆるM字カーブも改善傾向にある。一方、女性の管理職や役員の割合は諸外国と比べて劣後しており、直近のGGIでは114位とOECD諸国中ではほぼ最下位に近い数値となっている。

なぜ、日本企業では女性の活躍が劇的に進まないのか、その要因の一つに、女性が活躍しにくい職場環境の存在が挙げられる。これまでの日本企業のような男性中心の働き方が、女性をはじめとするあらゆる属性や環境の人材が活躍する上で阻害要因となり、その点を改善することで女性活躍の進展が期待される。男性の育児・介護への参加と意識改革も必要不可欠である。経済産業省自身も男性の育児参加の推進に積極的に取り組んでおり、配偶者出産に係る特別休暇(「男の産休」)を5日以上取得した男性職員は72%に上る。

企業がダイバーシティ経営を進めるためには、ワークライフバランスを実現するための様々な制度や仕組みを整え、それらを現場で着実に実践・運用していくことが不可欠だが、更に重要なことはその取組を「何のためにやるのか」という企業の方針を、経営トップが整理して社員に示していくことである。企業として5年後、10年後に向けて、どのようなビジネスモデルを目指していくのか、そのために必要な人材の獲得や育成をどのように行っていくのかを経営戦略の中でストーリーとして考え、トップが内外に発信し続けることが重要である。

女性の年齢階級別労働力率の推移