COLUMN

異動3カ月目が落とし穴
休職&退職を減らす事前ケア

ある大手IT企業の調査によると、異動後3カ月に休職する社員が多いという。
未然に防ぐための取組をレポートする。

異動後1カ月の早いセルフケア推進が鍵

日本企業には部署の異動や転勤はつきもの。厚生労働省の調査によると、労働者が強いストレスと感じている事柄の上位には「仕事の質・量」、「仕事の失敗、責任の発生等」、仕事での「対人関係」、「役割・地位の変化等」が並ぶ。ストレスが原因となって休職者を出すことは、ケアへのコストがかかるとともに、組織活力や生産性の低下にも直結する。さらに穴を埋める人材を採用するには、そのコストも必要だ。

そこで、休職者の増加を未然に防ごうと動き出した企業がある。ある大手IT企業では、過去3年間の休職者の事例を1つずつ詳細に調査した。その結果、1つの傾向が見えてきた。

「調査によると、7月に休職する人が著しく多いことが分かりました。我が社では4月に大きな人事異動がありますが、そこで異動した人たちが3カ月後に不調に至っていたのです

人事異動によってその人の環境が大きく変わる。上司も、同僚も替わり、仕事の内容も変わる。新しい仲間との環境ではその時にSOSを出す相手も見つけにくいのだ。「部署のみんなは忙しそうだから、自分はお荷物になってはいけない」と周囲の人に気を使うあまりに、悪化してしまう傾向があるという。

「新しい仕事で頑張りたいとか人に迷惑をかけてはいけないと思って、自分で調べてなんとかやろうとするので、非効率で長時間かかってしまうことが多いようです。新しい上司にもうまく仕事調整や相談をできずに、気付いた時にはだいぶ悪化していることが多いですね」と聞き取り調査を行った担当者は話す。

強いストレスとなっていると感じている事柄
強いストレスとなっていると感じている事柄

異動者と上司向けのeラーニングで休職者を6割減

そこで、この企業ではこうした社員の休職や退職を未然に防ぐために、対策に乗り出した。

まず、準備したのは、異動者向けとその上司向けのeラーニングプログラムだ。

異動者向けには、異動後1カ月の時期に「分からない時にきちんと相談できている人がいるか」というようなアンケート的なことから、「上司に相談してみよう」とか「夜の睡眠をちゃんととろう」と言ったようなセルフケアをメインとした内容で、自分を見つめ直す機会を与えている。そして必ず最後には、解決しなかったり悩んだりすることがあれば、社内外の相談先を提示している。

上司など管理職向けには、声のかけ方やチェックするポイント、仕事の配分方法や社内外の相談先などを学ぶ内容になっているという。大事なのは、不調者が出ることが業務のリスク発生につながるという意識を持ってもらうことなのだ。こうしたプログラムと現場への細かな聞き取りや声かけを繰り返したことによって、休職者は6割減ったそうだ。

せっかく育成した人材を休職や退職で失うことは、会社にとっても大きなリスクとコストとなる。社員を大切にする姿勢を示し、社員との信頼関係を築くことが企業に求められている。

異動後のケア
移動者向け
管理職向け